
ディラン嫌いの人の多くは、「あの声がダメ」とよく言わはります。
長年愛聴してきたオイラでさえ、最近の御大のゲロゲロ声は、その日の気分や体調によっては受け付けない時があるので、皆の衆のご意見もごもっともなことやと思います。
そもそも、ディラン御大を最初に有名にしたのがピーター・ポール&マリーがカバーした「風に吹かれて」やったわけですから、御大の音楽史には「カバー曲」という要素は不可欠なのでありますな。
閑話休題。
なんと2012年に、人権擁護団体アムネスティの創立50周年を記念して、ディラン御大のカバー・トリビュート・アルバムが発売されておったのですよ! オイラは最近まで知らんかった。
さっそく買い求めました。
全73曲。5時間13分27秒。CD4枚組の大作! ディラン御大、約50年のキャリアの有名どころの曲はほぼカバーされております。(お求めやすい価格なんやけど、インポートなんで日本語訳はありませぬ)
参加アーティストも超豪華。スティング、パティ・スミス、ジョー・ペリー、エルヴィス・コステロ、ジョニー・キャッシュ、ジョーン・バエズ、ジェフ・ベック、ブライアン・フェリー、カーリー・サイモン、ジャクソン・ブラウン、ピート・シーガー、マーク・ノップラー……という有名アーティストからオイラの知らないアーティストまで多種多様。
カバー曲のアレンジも多種多様。
あくまでもスタジオ録音の原曲に近いアレンジを施す人もいれば、大胆に原曲から遠く離れてしまっている人もいて、それぞれが自由に御大の歌を解体・再構築してリスペクトしているのでありまする。ロック、フォーク、カントリー、ブルース、ジャズetc……あらゆるアメリカン・ミュージックがテンコ盛ですぞ。
○
▼ Like A Rolling Stoneはオリジナルのイメージが強固ゆえ、こういうアレンジが落としどころになるんやろね。
▼ 御大のオリジナルよりもエエ感じの曲が多数おまっせ。この歌もそう。
▼ これがあの「廃墟の街」でっせ〜!
▼ 今年お亡くなりになった、御大の師匠筋にあたるピート・シーガーも熱唱。生涯現役! RIP.
○
そしてこのCDの最後を締めくくるのは、『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』からディラン御大自らが歌う「Chimes Of Freedom/自由の鐘」。
最後にもういちど聞き入っていた 最後にもういちど見入っていた
魔法をかけられ すいこまれたように 鐘がおわるまで。
鳴っていた いやされることのない傷の いたむ者たちのため
無数の混乱にさらされ、非難され、虐待され、だまされたり
もっと悪くされた者たちのため
また この全世界のひとりひとりの 挫折した者のために
そしてわれわれはひらめく自由の鐘を見つめていた。
訳詞/片桐ユズル